開発と製品化の谷間で‥‥

またまた長い間、本コラムを放りっぱなしにしてしまいました。本当に申し訳ありません。「緑のたより」はネタも多く、割と気安く投稿出来るのですが、「仕事部屋」はいつも暗くて重い雰囲気です。いつになっても「これなら大丈夫!」と太鼓判を押せる装置が出来ないので、とてもコラムを執筆する気力が湧いて来なかったのです。弊社では100台近い水耕プランターが常時稼働していますが、今でも毎日1~2台はエラー停止します。黒子として何事も無く動き続けてナンボの栽培装置がこんな調子では、とても安心してお客様にお出し出来ません。「信頼性」という十字架が今も重くのしかかったままなのです。販売エリアを絞って細々としか外販しないのも無理からぬこととご理解頂けるでしょう‥‥
こんな調子で装置はずっと変わらずヘッポコですが、「開発」としてならそれでも十分使えるのです。植えた植物だけでなく装置の面倒まで毎日見ることにはなりますが、もう十年近くそうやって樹木の水耕栽培を続けて来ました。おかげで、「樹木を水耕栽培する」という面では十分過ぎる程の実績を積み、様々な栽培ノウハウも得ることが出来ています。「緑のたより」の幾多の投稿も、こうした栽培実績のたまものと言えます。
実は、技術開発と製品化の間にこうした深い谷間が生まれるのは珍しいことではありません。素晴らしいアイデアでも、結局製品に至らずに終わるなんて良くある話です。弊社の水耕栽培装置もやがてそうやって消えていってしまうのか‥‥ と悶々としていたのですが、最近になってようやく抜本的なエラー対策(というか、エラーそのものを無くす方法)に辿り着き、ついに「安心してお客様にお使い頂ける」装置のメドが立ちました(特許も出願しました)。開発と製品の谷間を越えたのです!知恵を絞って装置の構造や制御方法に手を加えることを止め、開き直って敢えてローテクで済ますことに方針転換してようやく道が開けました。
左下の写真は、こうした方針転換後のコントローラー内部です。タイマー回路と数個のリレー、トランジスター等から成る自作の小基板が入っています。材料費数百円也です。難しい制御やエラー処理を諦め、装置を簡素化してトラブルの素を排除した結果です。万が一装置トラブルが発生した時は、装置に頼らず自分の手で原因を突き止めて対処しなくてはなりませんが、装置構造が単純化されているので難しいことはありません(そもそもトラブルの発生源自体が限られます)。これまでのコントローラーで使用している制御基板(右下の写真)と比べて見て下さい!百万円近い開発費を要し、基板自体も数千円します。マイコン搭載で色々な機能が盛り込まれてはいますが、残念ながらこの制御基板の性能に装置のハード面が追いついていなかった、というのが現実のようです。

コントローラーを材料費数百円也で自作し、装置構成もグッと簡素化したので、装置価格もこれまでより下げることが出来て嬉しいのですが、ちょっと困ったことも出て来ます。自作の部分が増えることもあり、どうしても見栄えがイマイチなのです。でも、使用する技術の方もローテクに舵を切っているのだから、装置としてはある意味、バランスが取れていると前向きに受け止めることも出来そうです。そういうことなら、いっそ装置コンセプトもコスパ重視の「自作テイスト」に振り切った方が良さそうです。そこで、今回の製品名はズバリ!「composition DIY」にしようと思います!実際、弊社内ではまさにDIYで装置を製作していますし‥‥ もともとDIYな装置なので、お客様のアイデア次第でいろいろ装置に手を加えて頂くことも可能です。次回以降は、そうした際のヒントにもなる装置のDIYな部分をあれこれご紹介しつつ、各部の詳細を解説していこうと考えています。